だいこん (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社 (2008年1月10日発売)
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本棚登録 : 724
感想 : 83
3

久々の山本一力さん。

飯炊きの技と抜きん出た商才を持ったつばきが、若くして一膳飯屋〈だいこん〉を切り盛りする、成長と家族の物語です。

主人公・つばきは、三姉妹の長女。腕のいい大工の父・安治が博打で多額の借金を負ってしまい、一家は苦しい生活を強いられます。
ある時、炊き出しの手伝いをしたのを機に、飯炊きの才能を見出されたつばきは、9歳にして火の見番小屋の賄い係を担当することになります。
同じく賄いをしていた、つばきの母・みのぶは娘の飯炊きだけではない商才にも気づき、ゆくゆくはつばきに飯屋を開かせたいと思うようになりますが・・・。

結構なヴォリュームで、読み応えガッツリの人情噺でした。
序章では深川に新たに店を構えようとするつばきの様子が描かれていたので、ここから物語がスタートするかと思いきや、本書の内容はこの冒頭に至るまでの、所謂“回顧談”となっております。
第一部は、安治の借金で一家がひたすら苦労する内容で、特に安治が番所に連れていかれる下りは、不憫すぎてしんどかったですね。
それだけに、第二部でつばきが18歳で飯屋〈だいこん〉を浅草に開店し、持ち前の才覚で軌道に乗せていく展開は、読んでいてワクワクしました。
ご飯を美味しく炊けるだけではなく、経済感覚もあり、常に商いのアンテナを張っているつばきの商才には感心するものがあります。
そして、山本さんの小説ではお約束の“江戸っ子の心意気”がここでも描かれていて、その情緒を感じることができるのも良いですね。
才覚があって頑張り屋のつばきですが、ちょっと負けん気が強すぎる傾向にあり、せっかく浅草でうまくいっていた〈だいこん〉を、とある大店の店主の挑発に乗ってしまう形で(所謂“売り言葉に買い言葉”的なノリ)、店を閉めてしまうというのが、博打好きの安治の血を引いているからなのか、“そこは冷静&堅実にいくべきなのでは・・?”とさすがに思ってしまう私でした。
という流れで、浅草の店を閉めて新たに深川にオープンしますよ(そう、ここで冒頭に繋がる)。と、いうところで本書は終了します。
つばきの深川での奮闘を描いた続編も手元にあるので、これから取り掛かりたいと思います~。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023年読了分
感想投稿日 : 2023年9月9日
読了日 : 2023年9月9日
本棚登録日 : 2023年9月9日

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