一昔前の義理人情とか自己犠牲精神とかを賛美し、対して現代を嘆くという構造が私はあまり好きではない。
この本も、ともすればそういった構図で描かれたのかもしれないが、それが全く気にならない程なめらかで魅力的な物語だった。
会社はつぶれ妻とは離婚し、絵に書いたように落ちぶれた男が、心臓の弱った母親を100マイル先の病院まで運んでいく。
車の中でのふたりの会話も、彼らを支える人々の思いも、心の底にしっとり染み込むような優しさや思いやりで満ちていた。読んでいて涙が止まらなかった。
「私はもう死んでいいと思ってます。けれど、もし私が死んだら息子がこのままダメになってしまう。だからどうか私を助けてください。」
この言葉に、息子へのの計り知れないほど深い愛情を感じた。素敵な時間を過ごせた1冊だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年4月20日
- 読了日 : 2021年4月20日
- 本棚登録日 : 2021年4月17日
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