仮面の告白 (新潮文庫)

著者 :
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 ものすごく簡潔に言うと、同性愛者である主人公の青年が、女性との恋愛を試みる話。女性に対する不能を自覚し、社会に適応しようと孤軍奮闘する苦悩は、計り知れないと思う。

 今やLGBTという言葉が世界的に認知されているが、この小説が書かれた昭和25年には無論そんな概念は存在しない。男に生まれたからには、20を過ぎれば女と結婚し、子をもうける以外に選択肢もない時代。当時どんなふうにこの小説が世間に認知されていったのか、すごく気になるところである。
 なぜこの小説が三島の代表作となり、長く読まれ続けるのか。その理由は、誰しも身に覚えがあるだろう「自己欺瞞」にあるのではないかと思う。世の中、本当はやりたくないけどやる、社会が許さないから、なんてことばかり。人間は社会的な生き物だなあと、つくづく思わされる作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代文学
感想投稿日 : 2017年4月3日
読了日 : 2017年2月19日
本棚登録日 : 2017年2月19日

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