あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2015年8月28日発売)
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本棚登録 : 2439
感想 : 211

読み手の年代によっては耳が痛い小説だと思う。私はどちらかというと三葉の立場だが、主人公の気持ちもよくわかった。というか、似たような境遇の人間を知っているので、共感することができた。

作中には何度も「ちゃんと」という言葉が出てくるが、人にとって「ちゃんと」の定義は違う。また、「かわいそう」も人によって違う。それなのに、それを押し付けるような人たちがたくさん出てきて、若干現代社会の縮図っぽかった。別に言われたことを素直に受け止めなければいいのに、真面目な主人公はいちいち考える。人は、考えることをやめようとしてもやめられない生き物だと思う。なのに、周りの人はわかってくれない。生きるのしんどそう。

全体的に生きるのがしんどい人の話だと思う。『流浪の月』ほどはわかりやすくなく、設定に頼っていないが、みんな見えないところで大変で、でもそのことにお互い気がつこうとしない。図星を指されて恥ずかしくなって、だったら指されるようなことを言わなければいいのにと思う。

最後は上手くいきすぎてリアリティがなかったが、フィクションという枠組みの中ではとても楽しめる作品で、考えさせられた。私と同じ年代の人には割とドンピシャだと思う。すごく良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恋愛
感想投稿日 : 2023年1月26日
読了日 : 2023年1月25日
本棚登録日 : 2023年1月19日

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