途中、「人間と他の動物を隔てるものは何か」ということの推論にかなりのページを費やしている。特に、「動物に意識というものが無い、となぜいえるのか」を延々と論じている。つまり、「読者の多くは、動物は意識や自我を持たないとお思いでしょうけれども」という共通認識があることを前提に議論が進んでいく。
日本人は、他の動物が人間と同じように意識や自我を持っていることについて、比較的すんなりと受け入れていると思われる。しかしキリスト教やユダヤ教の人たちは、そうしたことを受け入れない、人間は動物とは違う、という意識が強いのだろうと、改めて認識させられた。
(なおここで言う人間とは自教徒のことで、他の教徒や有色人種は動物に含まれる。そういうのが無意識でもう根付いているのだろう。)
本書は結論として、人間と動物を隔てているものは、客観的現実と主観的現実の間にある、「共同主観的」現実を持っていることだという。これはサピエンス全史で言うところの「妄想」と同じ意味だろう。こういう共同主観的現実を理解できることで、宗教や貨幣や組織というものを共有することができるようになった、他の動物よりも多くの個体同士で協力体制を築くことができるようになった、と。さらに、「物語」を作ることで、支配者は大衆に疑われること無く支配体制を存続できるようになった、と。
宗教信仰心の弱い日本であっても、ブラック企業に身体を壊すまで勤め続ける人は多い。その統治方法の根源は古代中世の支配方法と何ら変わらないわけだ。
「サピエンス全史」が人類の過去を紐解いたのに対し、「ホモデウス」は人類の未来を予想するものであると筆者は言う。しかし、上巻はまだ、全史の焼き直しにすぎない。最終評価は下巻に委ねよう。
- 感想投稿日 : 2021年1月24日
- 読了日 : 2021年1月24日
- 本棚登録日 : 2021年1月24日
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