ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年5月15日発売)
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感想 : 6
4

・3つの視点で物語が進行する。それぞれ、詐欺グループを詐欺ろうとする役者視点、マフィア絡みと思わしき連続不審火事件を追うST視点、対立マフィアを放火で葬ろうとするマフィア視点
・売れない貧乏役者がアダルトサイトのワンクリック詐欺に騙され金を支払ってしまう。友人と話すうちに貧乏役者は詐欺グループを逆にカモってやろうと考えるようになる
・劇場型の詐欺を仕掛けるため、貧乏役者は人を集める。その中にマフィアの愛人の中国人とSTの黒が混じっている
・黒の活躍もありヤクザがバックにいる詐欺グループから500万円を手に入れることに成功した貧乏役者だったが、大物マフィアの名前を使ってしまったがために目をつけられ殺されそうになる
・実はメンバーの中国女が件の大物マフィアの愛人で、グループを操作しつつマフィアに情報を流していた
・黒はその企みを利用し、襲いかかってきたマフィアたちを逆に制圧。これによりマフィアを逮捕。ガサ入れで放火の物証を手に入れる

・ST視点ではどうやって火がつけられてのかを捜査する。不審火の現場に共通しているのは①金属と可燃性の物体が接触している②その周りを金属の物体に囲まれている
・放火方法は、違法改造した無線機で強力な電波を放ち、凹凸のある金属でそれを増幅して可燃物に接触した金属を加熱するというもの。放火現場付近で発生していたオカルトめいた電子機器の不調は違法無線の強力な電波の影響を受けたもの
・最初は違法無線使用中の事故。その後は方法を確立するための実験。本番は対立マフィアを放火によって始末した
・マフィアは元北京大学の学生でバリバリの理系。波動関数を用いて放火の計算をしていた。また、他のマフィアが日本の警察を侮る中で彼だけは日本の警察を恐れていた
・しかし恐れる一方で自分の放火手段は見抜けるはずがないと踏んでおり、マフィアでありながらまどろっこしい手段に拘泥したのは日本の警察に挑戦するつもりだったからなのかもしれない
・いつもの無能枠警察も健在だが、今回は複数視点で物語が進むのでいつもより影が薄かった

初見で電磁波的な何かで焼いたんだろうなとあたりはつけていたが、そこから一歩すすめて周囲の金属を増幅装置として使うアイデアは面白かった
役者グループが最終的にどう事件に関わってくるのかはずっと考えていたがイマイチ読みきれず、ラストの解決は鮮やかだったと思う
気になったのは、役者グループが黒の身元を怪しむ一方で中国人女を一切怪しんでなかったこと。お話の都合なのだろうけど、この部分だけやけに警戒心が薄くて気になった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2022年10月14日
読了日 : 2022年10月14日
本棚登録日 : 2022年10月14日

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