ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1997年9月30日発売)
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感想 : 897
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読み始め、どこかの短編集に収められていた話から始まった。(たぶん)

今回これを読んですごく印象に残っているのが、笠原メイが話していた茶碗蒸しのこと。
電子レンジに茶碗蒸しの素を入れて、マカロニグラタンが出来上がったらどう思うか?(たしかこの二つの料理だった)と言う話。
個人的に、茶碗蒸しの素をいれてマカロニグラタンが出てきた時に憤慨してしまう人は村上春樹の小説を読むのがあまり好きではないような気がする。
予想とは違うけど、マカロニグラタンが出てきたならそれが正しいのかもしれない、なんて思うのはなんだから村上春樹的である気がする。
このように、ハードボイルドな、物事のあるままに暮らしているのが最初の主人公である。
主人公は妻が失われてしまったことで、起こった物事をあるがままに受け入れているだけではなくて、自分の信念とか目的みたいなもの(クミコを連れ戻す)を持って行動するようになった。
これは主人公の歳が30歳くらいであるけど、青年の自己形成のお話みたいに感じた。
あるいは、人が新しく動き出すのが何歳であっても良いということなのかもしれない。

あともうひとつ、浮気?に関して。
主人公はかつて同僚を充電したし、クミコはいろんな人と交わったわけだけど、それでも二人はお互いを愛し合っている。
しかし、自分の恋人がそういうことをした場合のことを思うとへんてこな気持ちになる。
恋人が他の人と交わったとしても、それだけで嫌いになれるとはとても思えないし、かと言って一緒に居続けるのも辛いような気がする。
恋人が浮気をする前から、そういう本質みたいなものが恋人のなかに内在していたはずだから、行動に現れたからといって愛してはいけないわけではない。しかし、愛し続けなければいけない理由もない。
身体の関係があっても愛が動いていなければいいのだろうか??
昨日、三島由紀夫の本を読んでいるときに、「行動とは人生の要約である」というのがあった。
浮気的な行動が現実になったら、真っ直ぐに愛し続けていない人生だったということになる。
しかし、これは半分合ってるし、半分違っていると思う。
先ほどのマカロニグラタンの話のように、自分の今までの人生からは考えられないような行動が電子レンジから出てくる可能性だったあるのだ。
このようにぐるぐると考えていると、迷路のようなホテルに迷い込んだ気分になる。

最後に、この小説のわかりやすくて、わかりにくいところがとてもおもしろいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月17日
読了日 : 2022年2月16日
本棚登録日 : 2022年2月16日

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