朽木祥というひとは誠意があり、書いていることもまっとうだし、今どきの若い作家に比べたら日本語もちゃんとしているし、特に文句はつけられないんだけど、なんだか強く惹かれるってこともないのよね。
これは広島に原爆が投下された前後のことを3つの短編にしていて、どれも悪くないけど、最初の「雛の顔」なんて、真知子という母が凄く魅力的な人物なのに、小説として生かし切れていない感じ。
思うに、この人は「こういうことが言いたい」という観念が先にあって書いているんじゃないかなあ。
登場人物がいきいきと自然に動いてるという感じはしないのよ。
広島の惨事から、平和の大切さを学ぶっていうのは大切なことだけど、読み手が登場人物にもっと感情移入できるように書いてあれば、失われたものの大きさが、よりリアルに伝わるんじゃないだろうか。
児童文学の書き手として有名な人だからこそ、余計そう思うのかもしれないが。
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- 感想投稿日 : 2013年9月22日
- 読了日 : 2013年9月22日
- 本棚登録日 : 2013年9月22日
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