文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫 ダ 1-2)

  • 草思社 (2012年2月2日発売)
4.05
  • (493)
  • (508)
  • (293)
  • (46)
  • (12)
本棚登録 : 7639
感想 : 479
5

民族によって歴史が異なる経路をたどったのは、民族間の生物学的差異の反映であるという人種差別的な説明に異を唱え、民族ごとのおかれた環境の差異によるものであると歴史上の事実と共に説明している。以下学んだこと。

・カナ文字は音節表記法とよばれ一つの文字が一つの音節を表す。また漢字は表意文字といい一つの文字がそのままである意味を表す。

・功績が認められている有名な発明家とは必要な技術を社会がちょうど受け入れられるようになったときに既存の技術を改良して提供できた人であり、その人が生まれていなかったら人類史が大きく変わっていたというような天才発明家はこれまで存在していない。

・技術は、すべての条件が等しければ、人口が多く、発明する可能性のある人々の数が多い地域、競合する社会の数が多く、食料の生産性が高い広大な地域で最も早く発達する。

・人間社会の変遷には、小規模血縁集団、部族社会、首長社会、国家という段階がある。小規模血縁集団には、アフリカのピグミー、南アフリカのサン(ブッシュマン)、オーストラリアのアボリジニ、エスキモーなどがある。

・首長社会で宗教は権威者の富の取得を正当化したほか、赤の他人同士が争わず一緒に暮らせる下地を作り、また本能的な利己心と異なる自己犠牲(戦死など)を民衆に動機付けることができた。

・集団が大きくなるにつれ他人同士の紛争は天文学的に増大するため、小規模血縁集団や部族社会は数十万規模の人口の受け皿として機能することはできない。

・言語学者は、同じ意味を持つ単語の語形が、現在使われている様々な言語でどのような形になっているかを比較し、それらの言語の祖語の語形を推定する。この方法により、先史時代に祖語を使っていた人びとの文化を言語学的証拠として間接的に推定できる。

・ヨーロッパ人が熱帯東南アジアや太平洋諸島に到達したとき、技術やほかの面において優位な立場であったが、原住民が既に食料生産を行っていたこと、ヨーロッパ人が熱帯病に抵抗力を持っていなかったことがわざわいして、この地域に大挙して入植することができなかった。この地域で現在ヨーロッパ人が多く住んでいるのはニュージーランドやニューカレドニアやハワイといった温帯気候に近い島々だけである。

・古代スカンジナビア人がグリーンランドに入植したのちに姿を消した原因は未だにわかっていない。

・個人(偉人)の特質は歴史のワイルドカードであり、環境的要因やほかの一般的な要因だけで説明できない部分を秘めている。現実の歴史に個人がどのくらいの影響をあたえうるのかという疑問に対する答えはまだ出ていない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年1月22日
読了日 : 2020年1月22日
本棚登録日 : 2019年12月31日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする