予知夢 (文春文庫 ひ 13-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2003年8月1日発売)
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感想 : 1807
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予知夢
ガリレオシリーズ第二弾。第一弾が面白く、積んでいたガリレオの短編集を読み進める。東野圭吾のたんは余り得意では無いが、ガリレオシリーズは別物だ。
 夢想る
 何故予知夢に至ったのか。という部分が事件解決の肝になるが、聞いてみればそうなるしか無いわけだが、一切不思議に思わせる所に筆者の巧みが伺える。確かに母親が猟銃を持ち娘の為とはいえ発砲するのは違和感であり、発砲について、正当防衛について議論が描かれていない時点で違和感があった。湯川の鋭さと論理的な思考により解決に至る訳だが、草薙筆頭に警察では真相にいきつかないであろう事件だった。
霊視る
 科学的な部分は真相の締めの部分のみだ。短編では湯川の知識に紐づいたトリックが多いが今回は論理思考と推理力による事件の解明だ。
 人は不思議なものを見ると超常現象の様なものに縋るがロジカルに考えれば説明がつき事実に辿り着く事ができる。
騒霊ぐ
 共振によるトリックはとある有名作家も使用しており、知識としてそんな事があるとは知っていた。今回はポルターガイスト現象を引き合いに、意図せず発生する共振についてがトリックになるが、全体の組み立てと相まって面白い作品になっている。四人がいつまでも一緒に生活しなければならない矛盾が気にかかったが、素直に面白いと思えた。
絞殺る
 トリック、動機、妻のアリバイと長編にしても面白そうなアイディアが詰め込まれている。
 昔、何かの推理小説で「自殺で絞殺は不可能」だと探偵が言った記憶があるが、見事にトリックで解決して見せた。ガリレオシリーズでは珍しく真相がわかっても実際の事件は解決していない。警察にとっても湯川の存在がとても大きくなっている印象だ。
予知る
 自殺についてのトリックが見物。流体についてはわからないが意外な犯人、内容は素晴らしい出来だ。更にこの作品では最後の少女の言葉がガリレオシリーズのアンチテーゼになっており、作品に「棘」を刺したイメージだ。やはりこういう気の利いた皮肉が出せる事が、東野圭吾が偉大だとされる理由なのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月28日
読了日 : 2023年6月28日
本棚登録日 : 2023年5月17日

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