ワインズバーグ、オハイオ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2018年6月28日発売)
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感想 : 30
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人生が複雑怪奇であるということは真実だ。平凡な人生というものはありはしない。と、解き明かすような、アメリカの想像上のある町「ワイインズバーグ」に住む人々の暮らしや心模様の物語群でした。ひとつひとつの物語でもあるが、若い地方新聞記者ジョージ・ウィラードは聞き役でもあり、つなぎ役でもあり語り部です。

1900年代の初めに書かれたアメリカ文学、ヘミングウェイやフォークナーに影響を与え、モダニズム文学のさきがけということです。この前に読んだ佐藤泰志『海炭市叙景』の下敷きのようなものということで読みました。

なるほど、あるまちを創造、住人の人生模様を癖や性格などを素材にして物語るのは同じようです。でも、この「ワイインズバーグ」に住む人々は、「海炭市」に住む人々の生活がなんだか哀しげな様子なのに対して、こちらはとても奇妙な、むしろあっけらかんとしているような人間模様です。それなのにすごく人間らしいんですよ。人間はみんなどこかしら「いびつ」なところがあるんだよ、と言っています。

作者の観察眼、資質の違いですね。それともアメリカモダニズムと私小説派の違いかも。

こちらも結論は出ません、明るい未来の予言もありません、けれどもどこかしらおかしみを感じ、ほっとしたのも本当です。それに両方とも人間観察の背景に自然が美しく配されているのが印象深く、感動します。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年7月7日
読了日 : 2020年7月7日
本棚登録日 : 2020年7月7日

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