今まで読んだ将棋小説は当たり外れが大きくて。将棋を知らない自分でもこれはちょっとなぁ、と思うものもあったりするのだけど、これは間違いなく正真正銘の大当たり!
将棋の世界。藤井君のおかげで将棋のルールを知らなくてもなんとなく身近になった世界。
それでも私たち部外者が見ているものは、表面の、いや表面ですらない外側の一部分なんだと思い知る。
基本的なルールと、将棋盤と駒さえあればだれでもできる。しかも、1人だけでもできる勝負の世界。
この単純明快な勝負の、奥の奥にどんな世界があるのか。
勝ちと負け。勝負であるからには必ずどちらかが勝ちどちらかが負ける。けれど、不思議なことに将棋というのは完全に勝つ、あるいは負けるまで指すことは少ない。その手前で勝敗が決まるからだ。
その、負けを受け入れる瞬間こそが将棋の残酷さなのかもしれない。
ここにある5つの物語は将棋が持つ可能性を、残酷さを、救いを、恐怖を、そして希望をつきつける。
己の身体と頭脳を極限まで使い切る真剣勝負の世界の、その孤高の刃に震えた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2021年5月
- 感想投稿日 : 2021年5月22日
- 読了日 : 2021年5月22日
- 本棚登録日 : 2021年5月22日
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