表題作がとにもかくにも素晴らしい。一族郎党が甦る狂躁的な二百回忌と「私」が抱える肉親への気持ちが緊密に組み合わされていて、最初から最後の一行まで、心をぎゅっとつかまれっぱなしだった。まさに想像力の文学であり、この信じられない法事がどう展開するのかを確認するためだけでも、読む価値がある。
主人公の自罰傾向とそれをエネルギーにした爆発的な幻想性にはとても藤枝静男を感じたのだけれど、笙野頼子の場合は「期待に添えなかった子供であった私」が常につきまとう。静男の性欲モンダイは笑えるけれど頼子さんの「私をちゃんと見て」には他人事でないところがあり、忘れていた焦燥感が甦ってきて不快でさえあったかもしれない。それでもこの短編を読み、笑いながらも気持ちをかき回されるのは、ほかに比べる物のない強烈で貴重な体験だった。
もう笙野頼子は何冊か読んでいて苦手だとわかっている、という人にさえおすすめしたい。わたしもそうだったから。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本 - 小説/物語
- 感想投稿日 : 2013年1月16日
- 読了日 : 2013年1月16日
- 本棚登録日 : 2013年1月16日
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