百鬼園随筆 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年4月25日発売)
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カバーイラストは芥川龍之介によるもの
内田百閒の伸ばした鼻毛が
自身のドッペルゲンガーを捕まえているようであるが
逆に、ドッペルゲンガーの伸ばした鼻毛で
内田百閒が捕まっているようにも見える
芥川にとっての内田百閒はそういう人だったんだろう
…どういう人なんだよ
構造としては、ヨーヨーという玩具を考えてみてほしい
人間から見れば、上下運動をしているのはヨーヨーなんだが
ふとそれに感情移入をはたしたとき
人間のほうで上下運動の浮遊感を感じるということがある
つまりそういうことだ
もうひとりの自分自身に規定されて、地に足がつかない!

…このように、赤の他人の一方的に決めつけた話が
回り回って当人の耳に入ったとき
ドッペルゲンガーという幻想は生じるのだと思う
とはいえ、内田百閒という人が
じっさい地に足のついてない印象をまとっていたであろうことは
「百鬼園随筆」を読むと察せられるのだった
教員職についていたとはいえ、職務態度はデタラメで
原稿も書かず借金を膨らませており
そのくせ、余計なことにカネを使っては一人で後悔ばかりしている
根は生真面目なんだろうけど
そういう自分に耐えられない部分があったのではないか
その耐えられない部分を
小鳥や小猿に託していっときの開放感を味わったりもするんだが
そんなことは何の具体的解決にもならない
結局、書くことによる自己相対化のみが救済をもたらしたのであろう

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感想投稿日 : 2023年1月30日
本棚登録日 : 2023年1月30日

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