教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書 2293)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年11月21日発売)
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感想 : 62
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宗教とは何かという概要を1〜7章で説明し、資料編で主な宗教をそれぞれ解説している。
教科書の補助として読みやすく、分かりやすかった。
専門的にそれぞれの宗教を学びたい人にとっては物足りないと思う。教養としての入門書、ほんとにそのまんま。

「空」は“カラッポ”、「四諦」は煩悩を追い払う4つの過程を“明らかにする”こと、の説明で、だいぶスッキリした。

以下個人的な要約
序章
宗教は文化に根付いており、お辞儀の習慣や「平常心」の用語などにその影響は見て取れる。どこから宗教と括るのかは定義によって変わる。自然などの凄いパワーを表す「神」と救済する(仏陀のような)「神」がいる。キリストが「神」と訳されたのは、多神教の「仏」では唯一神の宗教観と矛盾するからだ。
第1章
歴史的な系譜を辿るとユダヤ/キリスト/イスラム/仏教/ヒンドゥー/儒教/道教/神道へと還元できる。東アジアは仏教/儒教/道教が(日本では神道も)チャンポンになり、東南アジアはイスラム/キリスト教も含み宗教の見本市のようだ。宗教的緊張が低く文化的交流のあるこの特異な環境は注目すべきように思う。
第2章
ユダヤ教からキリスト教とイスラム教が派生した。これら一神教は、唯一神とは何か、神の正義や救いとは何かと探求する。ヒンドゥー教、道教、神道など多神教では、様々な神を一種の現象と見て、その背後に宇宙的な原理があるとすることが多い。仏教では人間が修行して悟りを開くことを目的としている。
第3章
深く心に残る厳しい体験をした人は、希望と心の支えを求め、濃い信仰が必要になる。信仰の対象は必ずしも宗教ではない。宗教の本質は当事者の実存体験の深さだとする意見もある。宗教の負の歴史は宗教的叡智の記録であり共有財産だ。宗教は「不運」などの悪やその罪に自己責任論より深く取り組んでる。
第4章
宗教の営みに病治癒があるが、科学が発達した今日では正当できない。しかし人は不確実な「明日」さえ信じて生きるものだ。呪術の効果には気休めや社会団結の要素があり、それは案外重要だ。復活祭や豊穣祭などのめでたいものを祝う行事も、病治癒のような奇跡進行も、根底には生命力の信仰がある。
第5章
宗教とは生活習慣の一種である。多くの宗教には禁欲的な側面を持つ戒律があるが、それがどのようなルールになるかは歴史的に全く偶然だ。戒律や儀式に合理的理由がなく、神仏の命令としか言いようがないものでも、欲望が自然を蝕み社会格差を拡大している現実を見れば、宗教の善き働きが想像できる。
第6章
宗教には形の決まった動作や人生に付随する慣しが多くあり、儀礼という。儀礼を行う理由は複合的で難しいが、一番の機能はアイデンティティの表明あるいは確認がとする見方もある。儀礼そのものが共同体を運営する目的になる場合もある。厳粛なものから祭りのように賑やかなものまで様々だ。
第7章
宗教の教えは最終的に同じだとする意見がある一方、宗教間には異なる規定がありその本質が明らかでないことも確かだ。何かを問うことは宗教的な問いとして適切ではないかもしれず、どこまでを宗教とするのか線引きは難しい。保守的~革新的宗教が混在する中で宗教を問うことは、世俗を問うことである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月19日
読了日 : 2020年8月19日
本棚登録日 : 2020年8月14日

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