思考する言語(下) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

  • NHK出版 (2009年4月24日発売)
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感想 : 8

メールで人に要件をお願いするとき、「~して下さい」と書かずに「~して頂けないでしょうか」と書くことがほとんどだと思います。これは、「相手は必ずしも応じなくともよいし、応じたとしても命令に従ったことにはならないため、双方とも体面が保たれる。」という背景に由来するものだそうです。確かに、たとえ目上の人であっても、「~して下さい」と面と向かって命令されれば多少嫌な印象を受けるかもしれません。合理性が求められる現代ですが、こういったいかにも人間臭いことをこなすことも業務を円滑に進めるには重要なのでしょう。

国家間同士の契約では妥協点を見出すためにいかようにも解釈できるように表現を曖昧にする方がよいそうです。国家同士の利害関係が対立して平行線をたどることが多く、得てして一方に有利な文面では結論が出なくなるからだそうです。

特許のクレームはどうでしょうか。特許庁と出願人との対立があります。しかし、国家間のように同列ではありません。出願人に不利です。権利を付与する側と権利を付与される側との関係ですので仕方がない面もあります。審査官から不明確と言われればそれまでであり、審査官が納得するように明確に記載する必要があります。明確性は恣意的ですが的を得ていることが多いので、出願人としては「もっと頭使ってクレーム作りなさい」という思し召しを受けたと思って粛々と補正します。

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感想投稿日 : 2015年7月26日
読了日 : 2009年7月29日
本棚登録日 : 2015年7月26日

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