自ら産んだ子を「取り替え」た繭子。
発覚に怯えながらも、息子・航太への愛情が深まる一方、郁絵は「取り替えられた」子と知らず、息子・璃空を愛情深く育ててきた。
それぞれの子が四歳を過ぎた頃、「取り違え」が発覚する。
元に戻すことを拒む郁絵、沈黙を続ける繭子、そして一心に「母」を慕う幼子たち。切なすぎる「事件」の、慟哭の結末は・・・。
子の取り違えといえば、「そして父になる」が記憶に新しいところだが、この物語は取り違いを起こした人物が、当の母親だというところが大きく違った。
「そして父になる」も苦しくて、苦しくて、登場人物全てが苦しみぬくのだが、取り違いに差があるものの、この物語も終始苦しい、悲しい感情が自分に乗り移ってきてしまった。
物語の序盤では、普通分娩を望んでいた繭子が、急遽帝王切開になり、自分を責めるところから物語は幕が開く。
私にも子供が二人要るが、どちらも普通分娩で生まれた為、帝王切開の人がここまで心を痛めるものなのか!?
その辺は全く理解が出来なかった。
繭子の母親も、心を病んでおり、そんなこともあってか、どんどん自分を追い込んでしまう。
序盤の育児の場面は、懐かしいなぁ~という気持ちで読んでいた。
育児は全てが初めてのことだから、何が正解なのかもわからず、右往左往してしまう。
自分にもそんな頃があったなぁ~と・・・。
自分は良い母ではない、何でちゃんと出来ないんだろう?なんて、他人と比較して自分を責めたこともたくさんあったなぁ。
子供が赤ちゃんで居るのなんて、ほんの短い時間でしかないのに、あの時間は永遠に続くと思っていたなぁ。
幸せと不安が交互に押し寄せてきたり、寝不足で死んでしまうんじゃないかと思ったり、自分の育児は間違っているんじゃないかと自分を責めたり。
そんな自分の過去を思い出しながら、繭子と郁絵の愛情深い子育てに、嵌り込んでしまった。
辛く切なく苦しい話だったけど、心掴まれて、ググっと最後まで一気読みしてしまった。
- 感想投稿日 : 2021年4月23日
- 読了日 : 2021年4月23日
- 本棚登録日 : 2021年4月23日
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