乙女の大阪: デート、食べ歩き、お菓子・おみやげ探し、クラシックホテル・レトロ建物巡り…乙女心 (マーブルブックス)
- マーブルトロン (2008年1月1日発売)
大阪のレトロ建築が、とっても瀟洒で美しいの、ご存知だろうか。可愛いお菓子や長い歴史のある喫茶室が素敵なことも。よしもと新喜劇や人気の芸人さんたちが広めた、コテコテの大阪とは違う、モダンで、でも古めかしさに味がある大阪。そういうのがぎゅっと詰まった一冊。『乙女の東京』が面白かったので手に取った。
中之島界隈のレトロ建築群や、ガスビルなどは子供の頃の憧れだった。高校の頃、晩年の祖父が
「大学生になったらガスビルの食堂でお茶をしよう」
と約束してくれていた。それは果たされないままだったけれど、この本に載っていて、とても嬉しかった。丸福珈琲も本店に伺ったけど、年配の男性がゆったり新聞を読んでモーニングを楽しんでいたの、印象的だった。祖父も好物は、ほかほかのホットケーキにホイップクリーム添えたものに、コーヒーだったっけ。
大阪のいいおうちの男性は、『君』『僕』で話すし、スリーピースに帽子で出かけるのも普通だった。倶楽部でお食事したり、そういうことも日常で、女の人も優雅だった。そういう文化の積み重ねが乙女な大阪をつくったと思う。本当の大阪は、お笑いの忙しなさとはちょっと違う。もっとゆったりとしている。関西の街の空気の流れは、ゆるやかなのだ。
これが、大阪、京都、神戸、姫路、宝塚などなど、都市によって文化のありようはおのおの違うし、住んでいる人々は、それを明確に区別しているのだけれど。それにしても。
同時に、滋味のあるおいしい料理やビリケンさん信仰、法善寺の佇まいなど、しっとりした庶民の暮らしもまだ生きている。どちらも紹介されているのが心憎い。それにしても、ダイビルも中之島バラ園も、高島屋史料館も行きたいなあ。あ、もうダイビルはないか。惜しいな。
長く一緒にいたパートナーが大阪の人で、どこにいても何をしていても、『大阪』を探していた。愛惜やまぬ、といった有様であったので、私も大阪を廻ることもあるだろうかと読んでみたのだが、きっとそのひとの守備範囲の大阪とは、ちょっと違う気がする。被っているところもまた、ある気がする。本を見せたらどんな感想をくれるだろうか。聞いてみたいものだ。クラブ化粧品の容器の可愛らしさなんて、解ってもらえないかなあ。
田辺聖子さんお好きな方にも好まれそうな本だけど、ちょっと切り口がちがう。どこを見ても可愛い本。大阪に行くとき、持っていきたい。
- 感想投稿日 : 2022年10月26日
- 読了日 : 2022年10月26日
- 本棚登録日 : 2022年6月22日
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