読むだけだと、さらっと終わる小さな本です。お茶が、動と静の間や余韻を嗜み、味わうもののように、この本に多くの文章はありません。森下さんが師事しておられる武田先生のお茶道具や、お稽古で供されたお菓子などを、森下さんが絵に描かれ、それに文章が添えてあります。本当に趣味の深い方は、絵もお上手だという思いがあるのですが、この本を読んで、その思いを新たにしました。肩の力の抜けた、優しい絵。でも崩れすぎていなくて、きちんと筋目が通っていて。森下さんのお人柄が偲ばれます。梅の香りがほのかに香るのを感じるお話も、梅雨の大粒の雨も、この方のお手になると、香りや風合い、音…五感が思い出してくるのです。見事だなっていつも思います。お菓子のことも、常盤饅頭なんて、どのくらい頂いてないかしら。流水の透明な夏菓子も、宝石みたいな干菓子も、季節の折々に、お出ししたい相手を思って整えるもの。それが母親だったり自分だったり、気楽になるので。私では物語にはなりにくいのですが…ふふふ。それにしても、すうっと読んでかえすというより、手元において、時々開けては一服。というのが似合う一冊だと思います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年11月7日
- 読了日 : 2021年11月7日
- 本棚登録日 : 2020年7月29日
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