経済学の考え方 (岩波新書 新赤版 53)

著者 :
  • 岩波書店 (1989年1月20日発売)
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感想 : 34
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宇沢弘文は、数理経済学から社会的共通資本への急な転向により、ある種の奇矯な人として受け止められているところもあるかと思う。この本を読んで、宇沢が1970年代の「反ケインズ経済学」をどのように眺めていたのかよく分かった。解説することもしたくないのだが、避けても通れないのでイヤイヤ解説すると言明するくらい。学問としての理論がどうこうではなく、歴史的・社会的背景を無視した前提の置き方、そしてそこから演繹される理論を格差などの問題に対する免罪符として用いる姿勢が我慢ならなかったのだろう。もちろん宇沢自身も1960年代のベトナム反戦運動などの文化的影響から自由ではない(多分、日本からアメリカに来た人間には特に眩しく見えることもあったのでは)が、2021年時点の感覚で言うならば、宇沢の問題提起には当時よりもうなずく人が増えているのではないかと思う。

必ずしも紹介される学説の論理をきっちり追わなくても読める本ではあるが、宇沢先生は読者のレベルを想定するにあたり現代の感覚で言えば手加減がない。ワルラスの一般均衡理論を数式とグラフで解説してくれるのだが、「これまでの議論からただちにわかるように、この供給関数は賃金Wと財の価格Pjとにかんして零次同次である」なんて急に言ってくる。ただちにはわかりませんってば。だいたい零次同次の意味を知らなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2021年10月18日
読了日 : 2021年10月15日
本棚登録日 : 2018年11月5日

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