白蓮れんれん (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2005年9月16日発売)
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本棚登録 : 1739
感想 : 172
5

昔見た朝ドラ『花子とアン』を見ていた頃に本当は読みたかったが、なかなか機会がなく読めていなかった。

燁子の記憶の中に東洋英和女学院時代の記憶が頻繁に出てきて、本当に楽しかったのだなと思う反面、愛のない結婚をした彼女の辛さがよく伝わった。
慣れない土地で、女校長になるはずだったのにそもそも学校もなく、知らぬ間に戸籍には沢山の妾の名前があり、親と子ほども歳が違う。そして伝右衛門の子供を授かることは一生ない。想像に過ぎないが本当に苦しかったと思う。自分よりも下に見ていたはずの同性が自分よりも幸せな様子を見た時の描写では、嫉妬の感情がとても上手く描かれていた。
作中では燁子と伝右衛門はすれ違ってばかりたが、お互いに心の底ではどこか相手を憎みきれない愛情があったように思う。そしてそれぞれの愛し方があり、不幸にも全く噛み合わなかった。燁子が駆け落ちした後も、気づいていたような描写があったり、伝右衛門ほどの権力があれば龍介と燁子の仲を引き裂くことも出来たはずなのにそれをしなかった。きっとそれが伝右衛門なりの最後の愛だったのだと思う。

伝記小説ではあるが、これが事実ということに衝撃。実際の燁子さんも写真で見たが、とても綺麗な方だった。
最後に少し燁子の逃避行に対して村岡花子は好意的な意見を寄稿した、との文字を見て嬉しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伝記小説
感想投稿日 : 2022年6月28日
読了日 : 2022年6月28日
本棚登録日 : 2022年6月24日

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