夏の終り (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1966年11月14日発売)
3.31
  • (28)
  • (58)
  • (126)
  • (32)
  • (3)
本棚登録 : 1009
感想 : 102
5

若いころには興味はなかったけれど、親世代あたりが彼女のスキャンダルを小耳に知っていて強烈な言葉でいうと「破廉恥」な話題を世間に知られていたのだと思う。寂聴さんの私的作品は初めてだけど、少し意外で、なんだかしみじみと感動してしまった。
 自分でしたいように自分の心の命ずるままに生きたような世間の認識ながら、彼女の心の内を制御し、抑えながらの文章はとにかく流れ、美しい。少し、彼女がどうやって自分自身について苦しみ、人を傷つけたことへの後悔に苛まれそれでもまっすぐに生きてきた人の作品なんだろうなととても感じ入った。わかる人にはわかり、わからない人にはわからないだろうけれど、自分の罪を自分で良く見、分析し、自分を戒めてきたのかと思った。
 自己責任というのか自分がしたいようにしているに見られてもきちんと自分と世間に対して落とし前をつけて、きっちりと内省。現代の恋愛小説はグロテスクで自分勝手な理論で正当化していくセルフィッシュな感じ(自分勝手という日本語がつかえなくらいセルフィッシュでプラスティック)だと思うけど、この小説のほとんどの事が事実ならとすごく心を動かされた。
とにかく美しい文章だった。
 最後の「雉子」は衝撃だったー。(つд⊂)エーン
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 考え込む
感想投稿日 : 2022年10月31日
読了日 : 2022年10月31日
本棚登録日 : 2022年10月31日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする