政界汚染 (文春文庫 は 41-2 警視庁公安部・青山望)

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  • 文藝春秋 (2012年3月9日発売)
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4

大手の医療法人の理事長が参議院選挙に立候補した。
選挙戦に不慣れな理事長・中村に、選挙を食いものにしている人間が群がっていく。
残念ながら落選した中村は次点候補となる。
やがて中村からまとまった選挙運動資金をせしめた市会議員がひき逃げされ死亡。
次いで京都で当選した参議院議員が、やはりひき逃げされて事故死する。
繰上当選となった中村の周辺で、事務長としてともに病院経営や選挙戦を戦ってきた金指が失踪し、中村は捜索を警察に依頼してきた。
はたして二つのひき逃げは偶然なのか?金指の行方は?
警視庁幹部の間で、青山を中心とした同期同教場の4人は「カルテット」と呼ばれ、徐々に知れ渡っていた。
従来の枠組みに捉われない捜査は、本来警察があるべき方向へと組織をけん引していく力となっていく。
国の行方を憂うべき政治家は権力を手にしたときから、政治屋へと変わっていく。
利益のために国家の安全を平然と無視する企業家たち。
リアルだといわれている濱さんの作品だけれど、逆に本当にリアルなのだとしたら怖い・・・と思ってしまった。
平和な時間を過ごすことがあたり前だと思い込んでいる日常。
実は見えないところでは誰かによって地中の土が徐々に削り取られ、私たちは空洞の上に立っているのかもしれない。
事件の背景には、政治、経済、宗教、他国の陰謀・・・。
さまざまな要因が複雑に絡み合い、読みにくい箇所もあるにはあった。
けれど、聞き慣れない言葉も逆に面白い。
濱さんのシリーズは、これからも楽しみにしている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 警察小説
感想投稿日 : 2017年2月27日
読了日 : 2017年2月27日
本棚登録日 : 2017年2月27日

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