本の雑誌の連載で欠かさず読んでいた、一風変わった本を毎回紹介するエッセイ。
柳下氏には翻訳家・映画評論家などさまざまな顔があるが、この連載は犯罪研究家(twitterではcrime buffと書かれている)としての面が強く出ていて、各地の犯罪記録だとか犯罪者による著書だとか被害者の著書だとか殺人ファンジン(!)といった本が基本的には多いのだが、その独特な切り口で人間の不可思議さを感じさせるエピソードが汲み取られていくところが本書の醍醐味である。さらにはけったいな「史上最低」の称号を持つミステリー作家スティーヴン・キーラーの紹介(なんと4回連続!)、異常に詳細な記録を誇るハイジャック本、どこがエロなのかさっぱりわからない北方艶征譚などなど分類不能な本が入り込むのが著者らしい。とにかく犯罪者を含め何かに取りつかれ「手段と目的がすり替わったような」(「完全網羅ハイジャック全史」の項)人々の姿が強く印象に残る。あと最後のアメリカの犯罪ノンフィクションの項はウルフ『ピース』なんとなく連想させる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクションやエッセイ
- 感想投稿日 : 2016年4月17日
- 読了日 : 2016年4月6日
- 本棚登録日 : 2016年4月6日
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