思考法 教養講座「歴史とは何か」 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA (2018年5月10日発売)
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感想 : 9
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佐藤優氏が教養講座の中で述べた内容を本にしたもの。深い内容を簡潔に述べている。考え方は参考になるが、神学については知識がないため難解だった。
「(新井紀子)コンピュータは計算機に過ぎない。できるのは四則演算だけだ。過去4000年の歴史の中で数学が獲得した言語は、論理、確率、統計の3つだけだ。次世代スパコンや量子コンピューターが開発されようとも、非ノイマン型コンピューターが開発されても、使えるのはこの言語だけなのである。AIは計算機ですから、数式、つまり数学の言語に置き換えることのできないことは計算できません。では、私たちの知能の営みは、すべて論理と確率、統計に置き換えることができるでしょうか。残念ですが、そうはならないでしょう」p8
「太平洋戦争後の日本人の世界観のいわば背骨となった「合理主義」「個人主義」「生命至上主義」では危機を克服することができないという現実に我々は気づいている。しかし、どうやればよいか具体的な処方箋を書くことができない。そのために、奇妙な妖怪が日本を徘徊する事態になっている。その妖怪の名は、反知性主義だ。反知性主義とは、「合理性、客観性、実証性を軽視もしくは無視し、自分に都合がいい断片的事実や根拠のない伝説をつなぎ合わせて作った物語を信じるという態度」を指す。高等教育を受けていても、反知性主義的主張をする人は少なくない。それは、高等教育の基本にある合理性、客観性、実証性とは別のところから反知性主義が生まれるからだ。反知性主義者は、「状況はよくわからないけれども、ぼくの言っていることが絶対に正しい」という幼児性を脱却しない心理に囚われている。それだから、理性や事実など知性の言葉で反知性主義者を説得しようとしても無駄だ。反知性主義者が知性自体を信じず、憎んでいるからだ」p19
「戦時体制に協力した本を、岩波は復刻しない傾向が強い」p28
「本物の思想は、人を殺すのです。人を殺すぐらいの力がないと、思想として実際の力を持ちません。それは、思想を受け取る人間を、大義名分のため、その思想のために自分の命を捧げるという気持ちに、必ずさせるのです。自分の命を捧げるということは、自分の命を大切にしない人となるいうことです。そういう人は、他人の命はもっと大切にしない傾向が強い」p29
「旧TOEFLは、帰国子女だと620ぐらいみんな取れました。新TOEFLで110ぐらいかな。しかし、英検2級を取れなかったりする。英検はすごく重要。日本語を英語にする、英語を日本語にする翻訳能力が問われるからです。なんとなく頭の中でわかっているとか、反射神経で対応できるレベルだと、英検には歯が立たない。英検準1級以上であれば、外交官としても、商社員としても十分対応できます」p43
「戦時中の日本の思想のレベルは、相当に高い。戦争に負けたがゆえに、思想的に我々の方が劣っていたということでは全くないのです」p253
「戦前の日本について誤解があります。戦前は社会主義や革命は一切タブーで、そうしたことを口走ると警察にしょっ引かれたと思われていますが、全くそのようなことはないのです。社会主義云々ではなく、国体を変更すると言うと捕まった。ですから、日本共産党は戦前は共産主義革命を主張していません。日本共産党は、日本は封建制の下にあるという考えでした。封建制の下にあるから、プロレタリアートは資本家と手を握って市民革命を起こさないといけない。では、資本家って何? 三井・三菱? いや、三井・三菱とも手を握って、地主の親玉である天皇をやっつけよう。そのためには戦わないといけないというのが、共産党の32年テーゼです。だからこれは治安維持法で捕まるわけです。2・26事件や5・15事件を行った連中も革命を訴えました。右翼でも社会主義を考えている者はたくさんいました。北一輝の純正社会主義に表れるように。つまり、社会主義も革命も全然タブーではなかったのです」p266

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年10月19日
読了日 : 2018年10月19日
本棚登録日 : 2018年10月19日

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