ちょっと突飛な評価だと思うのだが、この「D・コパフィールド」の3巻。なんだか村上春樹の小説のような手ざわりを感じた。若き日を思い出して語る過去形の感じ、そのセンチメンタルな感じ、青春時代の甘くほろ苦い出来事を振り返ってゆく語りくちがそう思わせたのかもしれない。
そうしたこともあり、19世紀小説の近代らしさというより、むしろ現代文学のような感じを受ける。
「 伯母さんのうれし涙が伝わって、たしかに温かいビールの中へポタリと落ちた。 」35章 348p
かような一節など現代文学のような洗練を感じさせる。(翻訳の巧さなのかな…。)
さて、第3巻は、「ハングオーバー」な朝から始まる。
デイヴィッドは、ロンドンの新居への引越し祝いで、友人スティアフォースらを招いて暴飲暴食。調子にのって繰り出した劇場でも大顰蹙をかってしまったのだ。
デイヴィッド青年は、法律事務所の「パラリーガル」の職を得、社会人として歩み始める。その日々を描く。
この巻でも色々な出来事が起きる。
デイヴィッドは法律事務所で、少年期に自分を責め苛んだ義父マードストンと再会。さらには、職場の上司の邸でマードストンの姉とばったり出会う。また、デイヴィッドの乳母だったペゴティーの夫、御者の「意欲満々のバーキス」の病死。
そして、憧れの先輩にして友人のスティアフォースが、ペゴティー一家の美しい娘エミリーを連れ去る、という事件も勃発。デイヴィッドは、敬愛していた友人の所業に衝撃を受ける。
これらの出来事の合間で、甘い恋模様も語られる。法律事務所の上司の娘、美貌のドーラへの憧れと恋心。そして求婚。若きデイヴィッドは、素直で純心なので、すっかりドーラに夢中になり、四六時中彼女のことばかり思い詰めるのであった。
本巻終盤34-35章で、伯母さんがロンドンにやって来て、破産したことを告げる。
- 感想投稿日 : 2023年5月5日
- 読了日 : 2023年4月29日
- 本棚登録日 : 2023年4月20日
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