ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2013年9月19日発売)
4.25
  • (30)
  • (24)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 512
感想 : 24
3

JANE EYREというスペルなのであった。

性悪な伯母家族のもとでいびられた少女時代。そしてジェインはほどなく伯母から「孤児」扱いで家を出されて寄宿学校へ。その後ジェインは18歳のとき、家庭教師の口をみつけてあるお邸へ。「ソーンフィールド」の名で呼ばれる邸宅で、貴族ロチェスター・フェアファクス氏のおうちである。
上巻はかような展開。「日の名残り」を思わせるお邸が舞台である。

物語はジェイン主観の独白・回想の形式で進む。
ジェインは周囲の環境や、周囲の人物の人格を観察し評価してゆく。そして、ジェイン自身の心境や内面を語ってゆく。その語り口は、客観性があり、ジェイン個人の思考のものさしが感じられて現代的。自分の考えをしっかり築き始めている。因習や慣習に従属した思考でなく、風通しのいい感じをうけた。これは18世紀半ばの読者には痛快で、あるいは衝撃的だったのではあるまいか。

<以下若干ネタばれ的な>
**********
上巻はロチェスター氏の邸に舞台を移してから少々平板な印象が続く。ジェインの成長物語が淡々と進行するのかな…。
と思いきや、ミステリーな要素が続々と盛られる。後半、不可思議な事件が相次ぐのだ。
狂女めいた使用人の存在の謎。深夜のボヤ騒動(放火)。そして、或る夜魔女めいたジプシーの老婆が占いをしに邸に押し掛ける。
しかも「ジプシー魔女」のプロットでは幻想文学のような趣も感じさせ、多彩な味わいを見せる。
ロチェスター氏が秘める過去とは? 謎が積み残されたままで、下巻が楽しみである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学(古典)
感想投稿日 : 2021年6月3日
読了日 : 2021年6月3日
本棚登録日 : 2021年5月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする