赤い収穫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 6-2)

  • 早川書房 (1989年9月1日発売)
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本棚登録 : 139
感想 : 21
3

八百長ボクシングの試合から、警官隊による派手な銃撃戦まで、場面のバラエティー豊かで、移動も多く、展開が速い。
この点、「マルタの鷹」とは大違いで、飽きさせない。

さらに、

※以下、ネタバレにつながるが、

酔いつぶれた主人公「私」が朝目覚めると、
手にアイスピックを握っていて、

その前に死体が…。
という絶対絶命の展開まであり、ハラハラさせる。

そういう勢いやスピード感はたっぷり。(所謂「パルプ小説」風情だ)
なのだが、一方で荒削りなところが難点。
鉱山町「ポイズンヴィル」を舞台に、敵対する「ギャング団」的な諸勢力がせめぎあい、ドンパチして戦うのだが、その勢力関係図や、怒りの発端や利害関係がとてもわかりにくい。
(その街は、アメリカ西部近く、モンタナ州やサンフランシスコ近くらしい。)

サンフランシスコの「コンチネンタル探偵社」の「私」は、依頼人に招かれて「ポイズンヴィル」に降り立つ。
だが、その依頼人はすぐ殺される。状況不明のまま、「私」も殺されかける。
そんな案配で虫けら扱いされたことに憤った私は、意地を賭けて、その街の全ギャング勢力を殲滅してやる、と動きだす。(街の実力者の老人から、街にはびこるやくざ者どもを片付けてくれ、と依頼されたこともある)

主人公「私」は、かなりのダーティヒーロー。
探偵だというが、えげつないこともやってのける悪人で、会社員探偵とは程遠い。これまでも、殺人のお膳立てくらいはやってきたという。
今回のミッションでも、探偵自身も、殺しをいとわない。
法や警察の権威も意に介さない無軌道ぶり。
小説の中盤あたり、探偵の「私」は(銃撃戦の最中とはいえ)警官を撃ち殺してしまう(なぜか、そのことは不問に付されたように展開が進む。)
その後街のあちこちで、ドンパチが多発し、警察署長まで撃ち殺される有様で、捜査どころでない、ということなのかもしれない。
ちなみに、この警察署長、自ら警官隊を率いて、銃撃戦の最前線に立つ。署長危ないよ、と思う。

パワフルだが、かように荒削りな小説である。

余談だが、大藪春彦の小説の男たちをふと思いだした。
(おそらく、大藪氏はハメットの影響を受けているのでしょう)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー(海外)
感想投稿日 : 2020年6月30日
読了日 : 2020年6月25日
本棚登録日 : 2020年6月7日

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