第二次世界大戦 4 (河出文庫 チ 3-4)

  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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感想 : 14
5

シチリア島侵攻から戦後1957年現在まで
戦争勝利への努力に代わって戦後体制への様々な取り組みは
現在へと直接つづいているだけに、その業績を評価することは現在難しい。
現在において著者が英国史においてドイツに屈せず勝利を得た点で最大限に評価されているが
これを日本人でしかない身がわかったきになるのは難しいところである。
やはり日本人らしく日本について書かれている点からつまされるべきか。
「このときまで、われわれは激烈な空襲と大部隊の侵攻とによって日本本土を攻撃するという考えを固めていた。まっとうな戦闘においてのみならず、あらゆる穴や防空壕においても、サムライの捨身精神で死ぬまで戦う日本軍の無謀な抵抗のことを、われわれは考えていた。私の心には沖縄の情景が浮かんでいた。そこでは(引用者注・原文まま)数千名の日本人が、指揮官たちがハラキリの儀式を荘重に行った後、降服を選ばずに一列になって手榴弾で自爆する光景であった。日本軍の抵抗を一人ずつ押え、その国土を一歩ずつ征服するには、百万のアメリカ兵の命とその半数のイギリス兵の生命を犠牲にする必要があるかもしれなかった。(P432より)」
「一方、空と海から日本に対する破壊的攻撃がつづいていた。七月の終わりまでには日本海軍は事実上消滅した。日本本土は混沌のなかにあり、崩壊寸前だった。外交官たちは、天皇の権限の下での即時降服以外に日本を完全な崩壊から救うすべはないと確信していたが、実権は依然として軍部の手にあり、彼らは敗北を認めるよりは国民に集団自決をさせる決意を固めていた。恐るべき破壊に直面しながらもこの気違いじみた階級は何の反応もみせず、情勢を有利に転換するなんらかの奇跡を公然と信じつづけていた。(P434-435より)」
「日本の運命が原子爆弾によって決定したと考えるなら、それは間違いであろう。日本の敗北は最初の原爆が投下される前に確定していたのであり、圧倒的な海軍力によってもたらされたものなのである。最後の攻撃の拠点となっていた海洋基地を押え、突撃に出ることなく本土軍に降伏を強制することが出来たのは、ただ海軍力おかげだったのである、日本の艦船は壊滅していた。日本は五百五十万トン以上の艦船を擁して戦争に入り、その後、分捕りや建造によってそれをかなり増大させていたが、しかし輸送船団の組織や護衛が不十分で、有機的でなかった。日本艦船は八百五十万トン以上が沈められたが、そのうち五百万トンは潜水艦の犠牲になった。同様に海に依存している島国としてのわが国は、この教訓を読み取ることが出来る。(P436-437より)」
この日本について書かれた三点の描写を抜き出しても
あるいは矛盾しているかのような著者の複雑な立場と物事の捉え方をみることができる。
愚者は自身の経験から学ぶ。現在でも何ら変わらない。
己の正しさを疑うのは困難である。
だが自身の行動の責任は自身が取らなければ社会は成り立たないし
その成員である資格はない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月17日
読了日 : 2017年7月9日
本棚登録日 : 2018年10月17日

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