10歳くらいの男の子が学校帰りに自宅そば腹を刺されて死んでいた。エーレンデュルたちは悲惨な状況に心を痛めるが、タイ人の母親とアイスランド人の父親を持つ子シンドリだった。少年の学校では移民の子が1割くらいはいるといい、教師の中にも移民に敵対心を持つ者がいる、などがわかってくる。今から18年前の作品だが、著者がこういう作品を描くということは、現実のアイルランドでも移民とのあつれきがあるということなのか。
シンドリは移民の子だから殺されたのか? 多文化共生、言うは易し、行いは難し。その中で揉まれる、受け入れ側とやってくる側、それぞれの思惑をインドリダソンは描きだす。だが着地点は「移民だから」というふうにはインドリダソンはしなかった。移民の子シンドリの死、という設定の中で、インドリダソンは移民問題を描いたのだと思う。
集会でアイスランドの国民的詩人の歌を歌おうとした教師は、民族主義的だと言われ反移民的だとレッテルを張られる。が、聞き込みをすると、彼の意図は、アイスランドに来るのは拒まない。だけど俺たちアイスランド人の文化と言語は大切に育てるのは最低条件だ、というものだった。・・なかなかたいへんだ。
2005発表
2019.8.23初版 図書館
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本・ミステリー 海外(英米以外)
- 感想投稿日 : 2023年5月25日
- 読了日 : 2023年5月23日
- 本棚登録日 : 2023年5月25日
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