いい本だったなぁ。前作と比べるとこちらの方が人々の心の動きが感じられて感情移入しやすい。ずっと語り部だった双子すら名前も出ていなかったことに気がつく。そういえば「僕ら」とずっと語っていたが、語っていたのはどちらだったんだろう。一心同体のような、同じものを見て同じことを考えていたのだとしたらどちらだったとしてもいいのだろうか。なんとなく私が話を聞いて慣れ親しんだのは今回の話の中心、リュカだったのではと思った。戦争が残したものはまだずっと感じられるのだが、人間らしい暮らしの暖かみがある。不具の子マティアス彼がもたらした影響は大きい。孤独も歪もずっとある。戦争をひきずって、未だ傷つけられて、みんなどこかおかしい。でも不思議と絶望は感じない。ちゃんとあちこちに愛の気配が漂っている。
年月を経て街は変わって平和になっていったのに、その経過に切なくなった。辿々しく街を訪れるクラウスの視点に同情する。まだ謎もある。三作目を早く読みたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年10月7日
- 読了日 : 2023年10月7日
- 本棚登録日 : 2023年10月7日
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