●天才作家夫妻のご亭主の方。ああすごいや。
佐藤亜紀さんも一人一ジャンルと言うか、似た小説を書く(書ける)人がいないけど、こちらもまたえらく独特。
一風変わった小説です。
●さて、歴史に名高いサラミス。
しかし、海戦そのものには、そう力点は置かれはていません。
開戦に至るまで、ペロポネソス勢とアテナイ人の間でいかほどの駆け引き遣り取り心理戦が行われたか、その過程を描くことこそが、この小説の中心なのです。
それにくらべれば、海戦の描写などむしろ刺身のツマといってもいいでしょう。
それにしても、テミストクレスの我執と妄念と野心の強さには、あきれはて、感嘆さえさせられます。まったくもって英雄的ではありません。
カロン、バットス、クレイニアス、エウリビアデス等々のギリシア人や、一瞬だけ登場するアレキサンドロスも、きわめてユニークな人物造型をほどこされています。
皆、自分(と母国?)のためだけに物を考え、行動しようとするあまり、結局、テミストクレスにいいようにされていると言う説もありますが。
そう言う執着をありのままに表わす彼らは、実に自由で、魅力的です。
●同じ読後感を起こさせうる本には、いまのところ思い当たるものなし。特異。
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- 感想投稿日 : 2007年8月17日
- 本棚登録日 : 2007年8月17日
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