クレヨン王国 月のたまご PART1 (講談社青い鳥文庫)

著者 :
  • 講談社 (1986年1月10日発売)
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感想 : 63
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2011.03.23
中学受験に失敗し、希望を失っていたまゆみは、青年・三郎と出会い、クレヨン王国へと足を踏み入れる。
子ブタのストンストン、ニワトリのアラエッサと共に4人で始まった「月のたまご救援隊」の冒険の物語。

この物語に出会ったのは小学生のとき。
当時自分より年上だったまゆみは年下に、三郎とは、見た目に関していえば同い年になった。
わたしは、サードという名前より三郎という名前のほうが好きだ。
三代ごとに生まれる第三王子は、生まれる前からきっと「サード」と呼ばれていたのだろう。
それは三郎にではなくその特殊な役割に付けられた名前である。
三郎がまゆみに「三郎」と名乗ったのは、自分を一人の人間として見てほしいと思ったからなのではないか。
憎しみを浄化して光にかえる黒髪の婆
しかし絶えず人間は憎しみを生み出し、原子爆弾という形でさらに婆を追い詰めた。
「まんぞくしないものが、まんぞくしているものを攻撃する、これが人間の歴史だよ。ーーだからまんぞくしてると、危険なのだ。」
という三郎の言葉がある。
この物語は25年も前に書かれたものであるが、なんら人間は変わっていない。
話のいたるところにまゆみの詩は、まるで挿絵のようである。
生きて帰れるかもわからない旅の読者の緊張をほぐすような、そんな役割も果たしていると思う。
続刊がないほうがよかったという声も多いが、わたしはどこか心に穴があいてしまったままのまゆみを見ていることはできない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年3月23日
読了日 : 2011年3月23日
本棚登録日 : 2011年3月17日

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