ティラン・ロ・ブラン 1 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2016年10月19日発売)
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この長い物語は、ウォーウィック伯ウィリアムという歴代の騎士が晩年聖墳墓巡礼して死んだことにして、神に仕える隠者として帰国する場面から始まる。

そして、ずっと疑問だった。なぜ、こんなシーンが必要だったのだろうかと。実際、隠者として帰国した彼は、国を救う活躍をしたのち、もう一度、隠者の生活に戻ってゆく。
きっと、騎士であり続けることは、この時代、戦い続けることを意味したのかもしれない。一流であればあるほど、数多くの決闘や戦によって殺した命との引き換えの結果だった。だから、贖罪?―命を全うするには、騎士を辞めて神に仕えるしかなかったのかもしれないと。

「名誉を守るとは難儀なものですねぇ。一難去ってまた一難とはこのことです」と、暴れる犬と戦って傷を負ったティランは、声をかけられた。騎士道の精神は、そしてその生き方は、騎士同士だけでなく犬との戦いにも理屈があることを指摘している。若いうちは健全で拠って立つべき騎士は、世間からは少し異様な世界かもしれない、と。

隠匿者・ウォーウィック伯に語る形で、ティラン・ロ・ブランの勇姿が映し出される。そして現在に続くガーター騎士団に選ばれるなかで騎士道を語る。騎士としてのバイブルとして、ドン・キホーテが愛読する理由がここにあるのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年4月22日
読了日 : 2022年4月14日
本棚登録日 : 2022年4月5日

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