彼女に関する十二章

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  • 中央公論新社 (2016年4月6日発売)
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「他人のエゴを認めて、自分のエゴも肯定する」文化と「他人のために自分のエゴを否定する」文化。西洋と東洋は根本が違っている、と説く。昨今のCOVID-19の対応にもよく表れているような気がした。

自分がマスクをしたくないから、他人もその”エゴ”を認めようとする西洋社会と、他人が感染することを防ぐために、自分のエゴを抑えて皆でマスクをする日本。必ずしもどちらが良いかという話ではないけど、日本の方が窮屈、圧力がかかりやすいような気がする。
そして、その延長上に戦争への道(軍事化)があると考えると、恐ろしい。

伊藤整の「女性に関する12章」は1954年上梓。当時は、東京オリンピックの10年前。ちょうど『ALWAYS 三丁目の夕日』の頃でしょうか。日本中が貧しかったけど、希望にあふれていたのでしょう。それに比べて、本書上梓の2016年は、…。勉の同棲相手の妊娠に際して、「この世って、生まれてくるに値する」と確信を持って言えない主人公に同意する。60年間で、今日なら68年か、私たち日本は、便利さのために希望と自信を失ってしまったのでしょうか。
そして、女性にとって生きやすい時代は、まだまだまだ、遠い先かも。

1つだけ変わらない点がある。「全家庭の奥様方の内、その92%は離婚を希望しております」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年3月8日
読了日 : 2022年3月5日
本棚登録日 : 2022年2月27日

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