佐藤春夫文学忌 1892.4.9-1964.5.6 春夫忌
高村光太郎とは、肖像画も描いてもらう友人関係にあったようです。
高村光太郎の詩集智恵子抄の詩と散文「智恵子の半生」「九十九里浜の初夏」「智恵子の切抜絵」を投影して、友人としての著者の目を通し、光太郎と智恵子の生涯を小説としたものです。
“静寂の価” は、二人を紹介してで合わせ、やがて惹かれあい、愛しあっていく姿を丁重に追っていきます。詩では、“冬の目覚め”“人類の泉”“狂奔する牛”等が取り上げられています。
光太郎の父親は彫刻家光雲。二人の結婚に全面的に賛成ではなかったものの、結婚の報告をして、光雲の準備した工房での生活が始まります。
智恵子さんが、病弱とはいえ、まだ元気で、自転車に乗ったり、山に登ったり、絵を描いたりと、生き生きと動いています。
“同棲同類”では、新生活を始めた二人ですが、生活は困窮が続きます。智恵子は自分の着物も生活費の為処分していきます。普段はセーターとズボンの様な軽装となります。そこで読まれた詩が“あなたはだんだんきれいになる”付属品を捨ててきれいになっていくという詩ですが、愛があれば装飾品は不要なんですかね。そう思うとこの詩は、悲しさがありますね。この二人の生活の困窮に加えて、智恵子の二本松の実家が火災や弟の散財等によりいよいよ駄目になります。心労が重なり智恵子さんの具合が悪くなっていきます。
この工房は、東京の千駄木にあり、ある日智恵子が、森鷗外先生の家の前を通って東京の空を探しにいき、やはり見つからなかったという場面があり、そこに生活していたことが忍ばれます。
最後は、精神病院に入院させての看病となりますが、二人は最後まで支え合っての生活でした。
智恵子抄の詩を織り交ぜながら、詩だけでは理解できなかった場面を補い、最後まで二人を見守る様な小説でした。
- 感想投稿日 : 2023年5月6日
- 読了日 : 2023年5月6日
- 本棚登録日 : 2023年5月6日
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