第一章は、松本清張かと思われる様なミステリアスの幕開けとなり、数ページで物語に引き込まれる。
そして、理論的な砂の描写と、詳細な昆虫の写実に 現実に戻される。
教師である男が休暇を使い昆虫採集にやってきた砂丘の部落。深い砂穴の一軒、未亡人が住まう家に軟禁され、砂掻きという労働を余儀なくされる。
男の混迷と逃亡の生活が始まる。
恐ろしいものは、砂だけではない。「愛郷精神」を掲げる村人の集団意識。過酷な砂との生活に日常性を認める女。そして、逃亡を企て続けた男が、砂との生活の中で日常性を受け入れ、希望らしきものまで認識していくその慣習性。
砂は、現代社会の比喩とされるが、砂のあるがままとして読んでも充分に思考するものがある。
「罪がなければ、逃げる楽しみもない」副題ともいえるこの一文は、社会生活への従順性の表現なのか
初めて読んだのは、いつだったかも忘れてしまったけれど、読書の嗜好性を決定された一冊です。
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読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
新潮文庫
- 感想投稿日 : 2022年4月23日
- 読了日 : 2022年4月23日
- 本棚登録日 : 2022年4月23日
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