言わずと知れたジャパニーズホラーの金字塔「リング」の続編。
1作目のヒットに気をよくして書かれた2作目というものは、つじつま合わせのためにどこか頓珍漢になりがちだが、本作は違う。1作目の段階で、構想がほとんど出来上がっていただろう。
鈴木さんの書くホラーは、読者の心に根を張る。想像力をかき立てられ、恐怖は読者の中で増殖していく。それはさながら、本作で書かれている山村貞子の増殖のようである。
これだけ認知度のあるホラー映画のキャラクターはそういない。ほとんどの日本国民が「山村貞子」を知っている。その事実が、「リング」をはじめとする一連の作品の偉大さの証明であると思う。
背後に感じる何者かの存在、誰もいないはずなのに確かに人がいたとわかる空気、何かに導かれているとしか思えない偶然…
視覚で拾えない、すなわち特定ができないものに対して、人は恐れを感じる。
恐れは体感するものだ。登場人物は、全身を使って恐れを体感する。人が恐怖をおぼえたときの原始的かつ生理的な身体反応を余すところなく書き出す点に、作者の技量の高さがある。山村貞子という魅力的なキャラクターと鈴木光司という作家が、「リング」にはじまる一連の作品をここまで日本に浸透させたのだと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年7月23日
- 読了日 : 2020年7月23日
- 本棚登録日 : 2020年7月23日
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