時間飛行士へのささやかな贈物 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-10 ディック傑作集 2)

  • 早川書房 (1991年1月1日発売)
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本棚登録 : 254
感想 : 10
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本屋に並んでいるディックの本が、ちょっとだけ縦長になり、お洒落な表紙に変わっていくのってディックの小説のようだ。
これってなんていう現象?ポジトロン現象?書影の出てこないこちらも次のポジトロン現象の対象か?

で、「電気蟻」を読み直したくて再読。
自分が電気蟻(有機ロボット)だと知った主人公が自分の現実が穿孔テープにプログラムされているものであると知る。パンチ穴を塞いだり開けたりすると、目の前の街が消えたり、部屋の中に鴨が現れたり。そこで、「究極絶対の現実」を知るためにテープを切る・・・。
穿孔テープというガジェットがなんとも時代的だが、パンチ穴をうまく使った展開。部屋の前に野鴨がふわっと出てくるシーンや、テープを切ったあとにみる「究極絶対の現実」が幻想的というかドラッギー。

今回、気づいたのがだ、ディックってなんとなく落語っぽい。
「てんしき」みたいな「アフター・サーヴィス」や、緊張するといきなりアメーバ状になってしまう「おお!ブローベルとなりて」などストーリー自体の馬鹿馬鹿しさが落語っぽいのがだ、「電気蟻」「自動工場」などの最後のオチの余韻が落語っぽい。

逆に、自分の死体を目の前にして、「この死体が俺なら、俺って誰?」という落語「粗忽長屋」なんてまさにディックだったりする。
「電気蟻」の落語版を柳家喬太郎で聞いてみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2013年6月21日
読了日 : 2013年6月18日
本棚登録日 : 2013年6月13日

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