「クララとお日さま」、オーディオブックで聴き終わりました。
カズオ・イシグロさんの本を読むのはこれが初めて。気になっていたのだけれど、機会がなくて、やっと読むことができました。
アンドロイド(物語の中ではAFと呼ばれている)のクララから見た、人間の愛情の物語。
2つの側面からの感想を書いておきます。
1つは物語の感想。
もう1つはオーディオブックとして聴いたことに対しての感想。
まずは、物語。基本的には親と子供の愛情の物語。愛するがゆえに行き違ったり、回り道をしたり、届かなかったり、そんな日々の中の感情を描いたもの。
面白かったのは、その物語を、アンドロイドの目線で描いていること。この本では、全てのことがアンドロイドのクララの視点で描かれている。景色も、物事のいきさつも、人間の感情(をクララが推察したもの)も。
なので、時に、変な解釈をしていたりもするんだけど、それはアンドロイドだから、ということだからなのか、人間だれしもものごとを自分なりの解釈をしていて、時にはそれが変なものだったりするのかもしれないな、と思わせられました。
そして、アンドロイドであるクララが、人間らしい感情のようなものを持っていること、そして、逆に人間とは違う感情を持っていることに、安心したり、悲しくなったりさせてもらいました。アンドロイドという存在を介して、人間の感情を考えさせるものでした。
物語としては、ほんわりとした終わり方で、中途半端な情報のまま終わる部分もあるのだけれど、クララというアンドロイドからみた世界、という終わり方としては納得のいくものでした。
もう1つの感想はオーディオブックとしての感想。
ナレーションが素晴らしかった!
文章の地の部分は、基本的に「アンドロイドであるクララのモノローグ」。そして、そこに、登場人物たちのセリフがある、という構成。
クララの持ち主となる少女と、そのボーイフレンド、母親、父親、ボーイフレンドの母親、その他の人たち、全ての人物のセリフが、本当にその人の言葉に聞こえてくるのがすごい。少女とクララの違い、少女と母親の違い、少年と父親の違い。まるで映像が見えるような感じでした。
ほんと、素晴らしかった。
それでも、やはり「聞く」ということの限界にも気がついてしまいました。単語の「漢字」や「表記」が気になるものがいくつかありました。「あるこーぶ」とか「てんおう」とか「エーエフ」とか、最初の方に出てきて、物語の内容の理解には特に支障はないのだけれど、出てくるたびに耳に引っかかってました。その単語だけでも「文字」で見られる方法があればいいのにと感じました。
どこかでちょっと立ち読みして確認したくなるような、そんな感覚。
そして、物語を「聞く」ことで気がついたことがありました。普段、小説を読むときに、かなりの部分を読み飛ばして(斜め読みして)いるんだろうな、って気がついたこと。情景描写などを「聞く」時に、ちょっと読み飛ばしたくなったりしてました。早く先に進みたいのに、重要な部分と、ちょっとした説明の部分とが、同じスピードで読まれることが、ちょっと苛立たしかったり…。
でも、逆に、ちゃんと細部まで読むことの良さもあるのかもしれません。
色々と考えさせてくれるオーディオブックでした。
- 感想投稿日 : 2021年11月18日
- 読了日 : 2021年11月18日
- 本棚登録日 : 2021年11月18日
みんなの感想をみる