草原の椅子〈上〉

著者 :
  • 毎日新聞出版 (1999年5月1日発売)
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本棚登録 : 160
感想 : 12
3

遠間憲太郎、50歳、営業マン、離婚し、社会人となる娘と暮らす。
これまでの人生を後悔するわけでもないけれど満足せず、また今後の人生をどのように生きるべきか、自分が何を成して人生を終えるべきか、思い悩む。
同い年の親友・富樫は自営業の社長。
遠間と富樫は様々な人間トラブルと遭遇し、また貴志子という女性に出逢い憧れ、娘の弥生を通じて母親に虐待されて育った五歳の圭輔と出逢う。
宮本輝は、本書執筆前、日本という国に対し憎悪を抱いていたとあとがきに書いており、その気持ちを遠間と富樫に代弁させているのだと思う。
そして堕落した日本や日本人を再生させるには、とこれまた遠間、富樫、貴志子に考えさせている。
彼らの今後がその再生への道で、本書はそこまでで終了。
いろんな人間がいるなぁ、幼稚な日本人が増えてしまったのだなぁ、というのが感想。
遠間と富樫のあらゆることに関するやり取りはまともなのだけど、正直、二人の頭の中を整理するのを手伝っているみたいでしんどい(笑)。
あとがきを読んで納得しましたが。
本書の前に「樅の木は残った」と「漆の実のみのる国」で命がけの自己犠牲の人々の物語を読んだせいか、どうも本書自体が軟弱に感じられて仕方なかったな。
登場人物に語らせるのではなく、もっと読者に考えさせてくれても良かったか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宮本輝
感想投稿日 : 2013年6月28日
読了日 : 2013年6月28日
本棚登録日 : 2013年6月28日

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