ウレシパオルシペ: アイヌ文化で育てあう日々

制作 : 札幌大学ウレシパクラブ 
  • 地方・小出版流通センター (2013年8月1日発売)
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私はウレシパクラブで活動するようになって”アイヌのことはアイヌで”、”自分は差別をしていないから問題ない”など、アイヌ文化に対する和人の、どこか他人事ともいえる視線を痛感するようになりました。しかし、自分のすぐ隣にある異文化をきちんと理解できずに、果たして遠くの多文化を本当に理解することはできるのでしょうか(長谷仁美)というのが一番印象に。基調講演は、池澤夏樹、上橋菜穂子、横内龍三の各氏。池澤講演、上橋講演から共通して感じ取れたのが、アイヌとアボリジニの共通性。一時期、アイヌであること、アボリジニであることがマイナスであるような社会状況を作られ、固有の文化が断絶しかかり、その存在を認められると、今度は、固有の文化を知らないと責められ、あるいは自分は文化を知らないと自問する、と。世界地図をぐるりとまわして、日本列島プラスサハリンが、アジア大陸の上に虹のようにかかっている。そのとき、北海道を中心に、細長い島(サハリン、本州)がふたつつながっている。そういう図式から話をいろいろ組み立てる、という視点は刺激的。アイヌの首長たちが次々だまし討ちに合う背景も「言葉に頼る以上、言葉を徹底して信用する、というのがアイヌの考え方。しかし和人の場合は言葉を悪用する。嘘を言ってだます。」と指摘。上橋講演の、「俺、学校で自慢したいから、何かアボリジニの言葉教えてよ」そのお母さんが何と言ったと思います?私の肩に手をおいて、「ここに人類学者がいるわ、教えてもらいなさい」(笑)の一節も好き。/中川裕講演の、一度消滅した、イスラエルのヘブライ語を、建国時にかなりの力技で復活したイスラエル、ハワイ語の教育できる機関を増やしていってるハワイの事例などあげつつ、アイヌ語の言語政策が提言されているところは興味深く。/シマフクロウの話題や、クラブの活動も詳細に語られていてよかった。とくにイクパスイを作製はうらやましかった。/上橋菜穂子「隣のアボリジニ」、瀬川拓郎「アイヌの歴史 海と宝のノマド」(講談社選書メチエ)、魚住昭「野中広務 差別と権力」講談社文庫、結城幸司の版画、解散したアイヌレブルズの活動、その後の酒井美直の活動「イメルア」、熊谷たみ子さんの「カムイ レンカイネ/Amazing Grace」は追ってみたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月13日
読了日 : 2021年8月12日
本棚登録日 : 2021年8月13日

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