本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2016年6月26日発売)
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本棚登録 : 6658
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キャバ嬢を親に持つ小学生の女の子矢島大穴(ダイアナ)は、読書という共通の趣味をきっかけに彩子と仲良くなる。
自分の名前も親に染められた髪も家庭環境も気に入らないダイアナは、彩子の落ち着いた風合いの持ちものや家庭環境をとてもうらやましく思う。
しかし、逆に彩子にとっては厳しい家庭環境よりも、自由にゲームで遊んだりジャンクフードを食べたりできるダイアナの家やきらきらした持ち物がまぶしく見える。
お互いにないものを持つ者同士仲を深めていくが、ふとしたことからすれ違い、小学校を卒業してから10年間も交流が途絶えてしまう。
再会までの間、二人は別々の人生を歩んでいくが、互いの理想を備えていた人物として心のどこかで意識してしまっている。

題名からするとダイアナが主人公のように思えるが、彩子も同時に主人公であるし、他の登場人物たちの背景も描かれていて、それぞれの人生がある。
正反対のスタート地点から始まったダイアナと彩子は互いを理想として近づこうとしながらも、物語のラストでは思い描いていた場所とは違うところに至る。
人生において重要なのはスタート地点や家庭環境だけではない。まずは自分の意志と、家族よりもっと広い交友関係における人との関わり方だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月6日
読了日 : 2021年8月11日
本棚登録日 : 2021年9月6日

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