おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年4月25日発売)
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本棚登録 : 4957
感想 : 390
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時代物。全五話からなる怪談の連作。主人公は17歳の少女、おちか。彼女はある事件で心に大きな傷を抱えたため、袋物屋「三島屋」の叔父夫婦の元に身を寄せることになる。
そこで、叔父の提案で、店に訪ねてくる様々な客の話の聞き役をすることに。(この設定が、おちかが江戸時代のカウンセラーのようで面白い。)
導入の「曼珠沙華」では、まず話の導入が上手い。花の中にある顔を見るという語り手のぞくっとする話の内容には引きつけられる。「凶卓」「魔鏡」はさらにぞくっとさせられる。そしてラストはどれも悲しい。
第三話で、やっとおちかの過去が語られる。そこでようやく、おちかの心の闇を知ることになり、物語全体のキーとなっていく。
語り手たちは、おちかに話すことで、救われていく。それと同時に、おちかも少しずつ心が癒されていく。
物語の流れは素晴らしい。章ごとに単発でひとつの事件が語られ、それらが何らかの形で関わりあっていく。読みやすく、また徐々にキャラクターたちへの愛着が不思議と湧いてくる。しかし、ラストの章が個人的に残念。今まで出てきたキャラクター達が一気に出てきてカオス状態。。。しかも小出しにしていたファンタジーもここで全開になり、テンションの変化があまりにも激しいのだ。
ただ、ハッピーエンドで良かったな。
お気に入りの一文はこちら。
「子供時代に戻ったような有様で、口先で押し合いへしあい、話の骨を折ったり互いの言葉におっかぶせたりで、かしましいことこの上ない。掛け軸の恵比寿様が釣り竿をしまい、鯛を小脇に、耳をふさいで逃げ出してしまってもおかしくなかった。」
おちかと喜一が三春屋で再会し、お互い詰まっていた怖れを涙で流しきってしまったあとの兄妹のシーン。物語全体は重く不吉なのに対し、ここだけは飛び抜け明るく家族の温かさ、兄妹の絆をストレートに感じさせる。ここが私的にクライマックス。電車で読みながら涙をこらえるのが大変だった。

会社のチームで、課題図書を持ち込み、みんなで交換してレビューする、という企画を発足した。もちろん私が図書委員長。エクセルのフォーマットまで作ってしまった。
早速一冊目の先輩の本を読んでいるところ。色んな人の推薦本が読めるのはとても楽しみ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年12月10日
読了日 : 2013年12月10日
本棚登録日 : 2013年12月9日

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