ドローン探偵と世界の終わりの館

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年7月12日発売)
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本棚登録 : 129
感想 : 30

 オチは好き。

 オチは好き。大切じゃないけどほかに好きなところがないので二度いっておくわ。あー、いや、トリックの内容は好きかな。地上と水中を勘違いさせるっていう。
 あのな、こう、なんていうか。叙述トリックってな、ほんと、難しいんだよ。読者にストレス与えることなくだますって難しいの。文章表現だけでそれをやるの。ネタがよくても難しいの。
 だからさ、もうちょっとこう、文章、なんとかならなかったか。早坂、こんなに文章下手だったっけ? 過去形の多様というか、箇条書きしてんの? と思っちゃう。小学生の作文じゃないんだから。せっかくいいネタがあるんだから、ほんと、もっと雰囲気づくり、頑張れ。
 なんだろう、ぱっと思いつくところでいえば、犯人の名前を明かさず、それでも犯人側からの視点を組み込もうとして、会話を誰が発言者か分からないように書き込んでっていうね。その表現方法が必然である理由が見えないから、読者をだますためだけにそういう書き方をしてるんだなと思ってしまう。
 確かに推理小説ってのは、読者を騙す物語なんだよ。でもその騙されるのだって、「自分よりももっと巧緻な頭脳の持ち主によって、公正明大にいっぱい食わされる」(ヴァン・ダインの言葉より)物語であって欲しいわけ。「自分よりも劣ったものから、故意に嘘を吐かれた」(同)物語を読みたいわけではないの。そんで、叙述トリックを前者足らしめるものってのは、最終的に作者の文章力なんだと思う。それがね、圧倒的に足りてない。だめ、不許可、不採用。
 あと、最初に読者への挑戦状が入ってて、「トリックは出し尽くされてない」って言ってるけど、そういう意味でトリックが出し尽くされたって言ってるわけじゃねーよ。トリックの具体的な要素を交換すれば、新しいトリックはほぼ無限に出てくるだろうよ。その点では早坂の言ってることは正しいよ。そうじゃなくて、大枠としてはすでに出し尽くされてるってことだろ。この話だって「叙述トリック」で、「場所の錯誤」なんだから、ほかにも同じトリック使ってる話あるだろっつの。
 最初の挑戦状から微妙すぎてなんかもう、うん、好きな作家だけに残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ・ホラー
感想投稿日 : 2018年7月1日
読了日 : 2018年7月1日
本棚登録日 : 2018年7月1日

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