終末期患者からの3つのメッセージ

著者 :
  • ユナイテッド・ブックス(阪急コミュニケーションズ) (2010年11月11日発売)
3.39
  • (0)
  • (8)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 64
感想 : 10

医師として、数多くの患者の死を見届けてきた著者が、死ぬときに
後悔しないために、われわれが今をどう生きるか、ヒントを与えて
くれる一冊です。

著者が言うように、「もし死が敗北ならば、人の一生は最後に負け
ておしまいになる。だからこそ私たちは、死を敗北や不幸にしない
ように、ものの考え方を転換する」べきなのです。

では、どうやって死に対する考え方を改められるのか、より良く今
を生きられるのか。

本書には、まさにそのヒントが書かれています。

読者が現在、たとえ10代、20代でも、今から死を考えることで、違
った生き方が考えられるはず。
この世を去るときにわれわれが耐えるのは、苦痛と悲しみだけでは
ない。たいていの場合、最も大きな重荷は後悔であり、この問題に
関してはこの一語でことたりる(ヌーランド)

やり残したことがあるという事実こそが一種の充実(ヌーランド)

後悔は「解消されない葛藤」「修復されないこわれた関係」「実現
されない可能性」「守られない約束」「もはや生きることのない年
月」(ヌーランド)

度を超した欲は、自らを満足させることはなく、人生の充足感を減
らす。程良くコントロールされた欲が、人生を満たしていくのでは
ないかと思うのだ。物は所詮、物である。なのに、物にとらわれて
しまっている人間がいる。物で本当に満たされることはない。なぜ
ならば物はいつか失うからである

理解してもらいたいという渇望こそが、ものを創り上げる大きな契
機になるのではないか。ムンクは病が癒えると、『叫び』のような
傑作が描けなくなった。晩年の恵まれたユトリロは白の時代のよう
な凄みのある風景が描けなくなった。孤独で、理解してもらえない
苦しみは芸術を昇華させる。そして満たされると描けなくなるのである

理解してもらいたい、人は誰でもその気持ちを持っている。その気
持ちゆえに、人は大きな仕事をなすことができる

得ることが多くなったからこそ失う恐れを持つことも多くなったろ
うし、もっと得ている人のことを知りやすくなったため比較して苦
しむのだろう

どんなことが起きても、どんな結果でも、あるがままに受け入れら
れるようになれば、死すら恐れるものではない

異なっていると、理解できず、また理解してもらえない。それが怒
りにつながる

死ぬときに心残りとなるのは、やはり家族のことが多いのだ

つながりを失えば「誰もが」モンスターになり得る

私自身を翻ってみれば、ダークサイドに捕われてしまったときに救
ってくれたのは、やはり実地で学んだ死生観と、近しい人とのコミ
ュニケーションであった

勝っているときほど弱者に優しくし、おごらない者は、自らが負け
るときにでも情けを受けることもある

道を得ることは、生まれつきの賢愚によるのでない。人間はみな法
を悟り得るものなのだ。ただ、努力しているか怠けているかによっ
て、道を得るのに早いか遅いかの違いが生ずるのだ。努力するか怠
けるかの違いは、道を求める志が切実であるかないかの違いによる。
志が切実でないのは、無常を思わないからだ


人生をより充実したものにするために、ぜひ読んでみてください。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2010年11月14日
本棚登録日 : 2010年11月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする