時間と自由 (岩波文庫 青 645-9)

  • 岩波書店 (2001年5月16日発売)
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フランスの哲学者ベルクソン(1859~1941年)が1888年にソルボンヌ大学に学位論文として提出した著作。原題は『意識に直接与えられたものについての試論』。
本書の主題は、序言に「多くの問題のうちから私たちは形而上学と心理学とに共通の問題、すなわち自由の問題を選んだ」と書かれている通り、「自由」、そして「時間」である。
ベルクソンは、まず、量的多寡の区別ができるものとそうでないものを分け、区別できるものを「大きさ」で示し得る「量」(=「空間」)、区別できないものを「強さ」で示す「質」と明確化した。そして、「時間」とは前者と後者の両方の側面を持ったものとして、以下のよう述べている。
「要するに、自由に関しては、その解明を要求するすべての問題は、それと気づかれることのないまま、「時間は空間によって十全に表されうるか」という問いに帰着する。これに対して、私たちはこう答えよう。流れた時間が問題なのであれば、然り、である。流れつつある時間が話題になっているのであれば、否、である。ところで、自由行為は流れた時間のなかではなく、流れる時間のなかでおこなわれるものである」
即ち、時間には、時計で測定できる「物理的時間」(流れた時間)と、それぞれの人間が感じる「心理的時間」(流れつつある時間)があるが、人間が自由であり、より良く生きるためには、流れつつある、今この瞬間を大切にすることが大事なのだと言っている。
この二つの時間については、後に、前者は「ニュートン時間」(更には、相対性理論を考慮した「アインシュタイン時間」)、後者は「ベルクソン時間」と呼ばれるようになったという。
同時代の大哲学者カントは、「時間」は科学的なものであり哲学の対象ではないと考えたというが、それに真っ向から反論し「生の哲学」と呼ばれたベルクソンの思想は、従来にも増して「生きる意味」を問われる現代において、大いに参考となるものだと思う。
(2012年12月了)

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感想投稿日 : 2016年1月11日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年1月11日

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