著者の野口晴哉(1911~1976年)は、野口整体の創始者として有名な整体師。(野口体操を創始した野口三千三とは別人である)
本作品は1962年に発表され、2003年にちくま文庫から復刊されたもの。
本書は、整体師の著者が独自の視点から、風邪の正体とそれへの対処法について綴ったもので、西洋医学に慣れている現代の我々にとっては驚くような記述も少なくないが、「風邪というものは治療するのではなくて、経過するものでなくてはならない」をはじめとする著者の主張は目から鱗で、私は2007年に本書を読んでから十年あまり、風邪を引くと本書の内容を思い出しつつ対処している。(もちろん、有効との実感がある)
「風邪を引くと、鈍い体が一応弾力を恢復するのです。・・・体を使っているうちに、或る一部分が偏り疲労の潜在状態になって、そういう部分の弾力性が欠けてくると風邪を引き、風邪を引いた後、恢復してくる。それで私は風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうかと考えている」
「早く風邪を治そうとして熱を下げようとしたり、咳を止めようとしたり、そういう中断法ばかり講じていると、風邪を治そうとしながら体が硬張り、治療しながら体がだんだん鈍くなるというようなことになる」
「風邪をきっちり治せればもう千の病気に対処する力がある」
「早く治すというのがよいのではない。遅く治るというのがよいのでもない。その体にとって自然の経過を通ることが望ましい。できれば、早く経過できるような敏感な体の状態を保つことが望ましいのであって、体の弾力性というものから人間の体を考えていきますと、風邪は弾力性を恢復させる機会になります」
「風邪の効用はまた、すでに病気がある人は、それを機会に治ってしまうということです。上手に風邪を引くと古い病気が自然と治ります」
「できるだけ人間のもっている体の自然の力で暮らしていく。そういう自然の力が亢まって体は強くなってくる」
「元来、風邪は体の洗濯のようなものであって、体の偏り疲労を除去する自然の力なのです」等々
(2007年4月了)
- 感想投稿日 : 2018年2月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年3月20日
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