本所深川七不思議を題材にした七編の短編集。
本所深川一帯を仕切っている岡っ引き・回向院の茂七親分シリーズ第一弾。初登場とはいえ、岡っ引きとして既にベテランの域に達していて、本所深川の市井の人々から頼りにされていることが見て取れる。
〇〇七不思議とはどこの地方でもよく聞く言葉。今回の七不思議もなんとなく聞いたことのあるような、ちょっと摩訶不思議な言い伝えのようなもの。
「片葉の芦」「送り提灯」「置いてけ掘」「落葉なしの椎」「馬鹿囃子」「足洗い屋敷」「消えずの行灯」この七つの言葉を見るだけで内容を想像してわくわくしてしまう。
そんな摩訶不思議な七不思議も、宮部さんが描くとしっとり切ないものとなり、お話の余韻がいつまでも後に残るものばかり。
この時代の市井の人々の、日々の暮らしぶりや思い…嬉しいことも悔しいことも悲しいことも、全てひっくるめてさらけ出し、けれどそこに優しく温かい灯火を照らし救い出してくれる。茂七親分がいつもいいタイミングで手助けをしてくれるので安心できる。すっかり茂七親分のファンになった。親分が出てくるだけでほっとする。
七編全てのラストが僅かな希望の持てるもので、読んでいてとても心地よい。
茂七親分シリーズは、ますます追いかけていきたいシリーズとなった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宮部みゆき
- 感想投稿日 : 2022年9月28日
- 読了日 : 2022年9月28日
- 本棚登録日 : 2022年9月25日
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