凍える牙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2000年1月28日発売)
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感想 : 513
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バイクを颯爽と乗りこなす女刑事・音道貴子の物語。

意見を言うこともままならない昔気質な男社会の中に生きる音道の孤独感に、何度も胸が締め付けられた。
全てにおいて上から押さえつけられ、うまく感情を出すことも出来ない。
これだから女は、と見下されないために無愛想な仮面を被る音道。そんな音道と今回の事件でコンビを組むことになったのは、叩き上げデカ丸出しの中年男・滝沢。
性格的にも相反する二人。始めこそぎこちなかったけれど、事件を共に追うにつれ徐々に互いの距離を縮めていく様がとても良かった。

一番印象深いのはオオカミ犬・疾風(はやて)と音道が共に走る場面(もちろん音道はバイク)。両者の疾走感がとても心地よい。本物のオオカミ犬が走る姿も見たくなった。オオカミ犬がこんなにも優れているなんて初めて知った。
音道が本来持っている感情も見事に前面に出され、内にためていた全てを吐き出した姿に惚れ惚れした。
多くを語らないクールさがカッコいい音道の今後もぜひ追いかけていきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 乃南アサ
感想投稿日 : 2022年9月15日
読了日 : 2022年9月15日
本棚登録日 : 2022年9月6日

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